はつ恋【教師←生徒の恋バナ】
スピードを緩めることなく駅まで走ると、電車に飛び乗って学校へ向かった。



こんな時に学校行くか?って自分にツッコミ入れたいくらいだけど、1人でいると余計に気持ちが沈みそうだ。



教室に向かう途中、蒼に呼び止められた。



「鬼マサが2年の教室ウロウロしてるなんて、珍しいね。」



「まあな。」



「まさか、待ち伏せ?

なんか気味悪いなぁ…。」



「そう言うなよ、桐生に大事な話があるんだ。」



赤い目をした蒼の『大事な話』を聞くのは嫌だったけど、肩に手を回されて…。



「とりあえず、場所を変えよう。」



なんて言われたら、従うしかなかった。



屋上につながる階段の前まで来ると、蒼が立ち止まった。



私と向かい合うと、蒼が口を開いた。



「桐生、いずれお前の耳に入ると思うが…、その前に伝えておきたい。

坂下先生が、今朝…。」



「聞かない、聞きたくない!

私は何も知らないし、知りたくもない!!」



蒼の言葉を遮るように、私は耳を塞ぎ、叫ぶ。



だけど、私の抵抗なんて蒼には効かない。



手首を掴まれ、塞いでた耳から簡単に離された。



「桐生、ちゃんと聞け。」



「言わなくていい。

今朝、アンジェ先輩と一緒に病院から出てきたの知ってる。」



選ばれなかった私は、贅沢をいうつもりはない。



もう一度『ワカ』って呼んで、頭を撫でて欲しかったけど…。



そこまで望めないことは、分かってる。



ただ、一目会えたらそれで良かったのに…。



蒼たちは、最期まで看取ったんだ。



ズルいって思っても、罰は当たらない筈だ。



蒼は相変わらず手首を掴んだまま、私を見据えて言った。



「僕は、桐生に謝らなければならない。」



謝る…って?






< 263 / 286 >

この作品をシェア

pagetop