はつ恋【教師←生徒の恋バナ】
今日は、卒業式。



そして、坂下の葬儀が行われる日でもあった。



坂下が死んだからといって、学校がなくなるわけじゃない。



制服に袖を通して、家を出る。



学校に行くつもりで、駅のホームで電車を待った。



電車がホームに入り、ドアが開かれた。



ゾロゾロと人が降りていく中、坂下の香りが漂ってきた。



私は今降りた人たちに視線を向けると、香りの元を探す。



坂下が、その中にいるわけないのに…。



やっぱり、私は坂下に会いたいのだと再認識した。



顔を見れるチャンスは、もう今日しか無い。



そう思った瞬間、私は改札を出て、家に向かって走った。



倉庫には、お兄ちゃんが乗っていた自転車がある。



奥にしまわれた自転車を無理矢理引っ張り出して、それに跨った。



「きゃっ!」



よろめいて、軽く悲鳴をあげてしまった。



悲鳴を聞きつけて誰か出てきたら面倒だと思ったけど、運良く誰も気づいていないようだ。



私は、久しぶりに自転車を漕ぎ出す。



漕いでいくうちに慣れてきたのか、ふらつきもなくなった。



何とか斎場に到着したけど、昨日の騒ぎを思い出したら…。



中に入るのは、マズイだろうと思った。



その場に立ち尽くした私に、女が声をかける。



父の愛人だった、麗子だ。



「一卵性でもないのに、ホントよく似てるわね。

昨日は、驚いたわ。」



おそらく、和歌ちゃんと私のことを指しているんだろう。



「小さい頃の写真なんて、双子みたいに見分けつかないくらいだよ。」



「まぁ、二卵性の双子みたいなものだし…。」



…え!?



首を傾げた私を見た麗子が、しまった!とでもいうような表情をする。



そして、足早に斎場に入っていった。








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