はつ恋【教師←生徒の恋バナ】
「カズくんに会いに、斎場から着いて来たんだろう?」
坂下を乗せた霊柩車を運転していた人が、校門の陰に潜んでいた私に声をかけた。
私は、こくんと頷く。
「今なら邪魔は入らないから、おいで。」
手招きされて、坂下のもとへ近寄ることができた。
「昨日は亡霊扱いされて、災難だったね。」
声をかけてくれた男性のネームプレートを見て、どうりで見たことのある人だと思った。
「去年、兄の葬儀ではお世話になりました。」
私はそう言いながら、黒川さんにお辞儀をする。
「覚えているよ。
若い人の葬儀は、居たたまれない。
だけど…、友人の葬儀を取り仕切ることほど辛いことはないと身をもって知った。」
ずっと前に坂下が言っていた『クロカワ』とは彼のことで、『人目につく車』はおそらく霊柩車のことだろう。
そういえば、今日の葬儀には福沢先生も来ていた。
自分より先に黒川さんの車に乗った坂下を、どんな気持ちで見送っただろう…。
ふと黒川さんを見ると、泣きたいのを我慢してるような顔をしていた。
「私しかいないんだから、我慢しないで泣いたら良いじゃないですか?」
「いや、全部終わってから…って決めているからね。」
多分、黒川さんなりのケジメなのだろう。
「それより、カズくんにお別れしよう。」
黒川さんは、両手に乗るくらいの籠を私に手渡す。
籠には、白い花が一杯に入ってた。
それを手にして、坂下の棺に近づくと…。
「桐生!」
私を、呼ぶ声がした。
坂下を乗せた霊柩車を運転していた人が、校門の陰に潜んでいた私に声をかけた。
私は、こくんと頷く。
「今なら邪魔は入らないから、おいで。」
手招きされて、坂下のもとへ近寄ることができた。
「昨日は亡霊扱いされて、災難だったね。」
声をかけてくれた男性のネームプレートを見て、どうりで見たことのある人だと思った。
「去年、兄の葬儀ではお世話になりました。」
私はそう言いながら、黒川さんにお辞儀をする。
「覚えているよ。
若い人の葬儀は、居たたまれない。
だけど…、友人の葬儀を取り仕切ることほど辛いことはないと身をもって知った。」
ずっと前に坂下が言っていた『クロカワ』とは彼のことで、『人目につく車』はおそらく霊柩車のことだろう。
そういえば、今日の葬儀には福沢先生も来ていた。
自分より先に黒川さんの車に乗った坂下を、どんな気持ちで見送っただろう…。
ふと黒川さんを見ると、泣きたいのを我慢してるような顔をしていた。
「私しかいないんだから、我慢しないで泣いたら良いじゃないですか?」
「いや、全部終わってから…って決めているからね。」
多分、黒川さんなりのケジメなのだろう。
「それより、カズくんにお別れしよう。」
黒川さんは、両手に乗るくらいの籠を私に手渡す。
籠には、白い花が一杯に入ってた。
それを手にして、坂下の棺に近づくと…。
「桐生!」
私を、呼ぶ声がした。