はつ恋【教師←生徒の恋バナ】
アルバムを閉じた坂下が、口を開いた。



「少し、書いてみませんか?」



机には昨日と同じように、いつでも書けるようセットされている。



「何書いたら良い?」



「では、漢字で名前を書いていただきましょうか。」



私は筆を取ると、言われたとおりにした。



坂下は、私の字をまじまじと見つめる。



「書道の経験があるようですね。」



有名書道家・桐生倖嵐の孫だし、それなりには…ね。



ずっと父に教わっていたから、ジイサンから習ったことは無いけど。



「今は、もう習ってないんだ。」



不倫なんかしてる父を、軽蔑してるから…。



そんな言葉は、口に出さないけど。



「桐生さん、見ての通り殆ど活動しておりませんが…書くことが嫌いでなければ、入部しませんか?」



「私のことは、ワカって呼んで。」



桐生の名前は、私には重い。



「ワカは…娘の名前です。」



坂下はそう言うと、筆を取って『和歌』と書いた。



飽きる程ジイサンや父の作品を見てるけど、私は坂下の字が一番好きだと思った。



「先生が直接指導してくれるなら、入っても良いよ。」



私がそう言うと、坂下は微笑みながら言った。



「勿論です。」






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