はつ恋【教師←生徒の恋バナ】
家族総出で来た目的は、お爺さんとの会食だったらしい。



しかも、お互いの門下生も一緒に…という、大袈裟なもの。



ご馳走は好きだけど、こういう場は嫌い。



あとでジイサンに、作法が云々言われるに決まっている。



知ってたら、前のように学校の用事でも作っておいたのにな…。



あ、だから私には黙ってたのかもしれない。



「その顔じゃ、ちょっと…ねぇ。」



そう言って、母がため息をついた。



そりゃあ私だって、顔にガーゼくっつけて高級レストランの個室で食事なんて嫌だ。



「私、先帰ってるからいいよ。」



父が書生を呼んで、私を家まで送るよう指示したとき、お爺さんがそれを制した。



「お弟子さんともお話したいので、車はこちらで手配させていただきます。」



その言葉を断るわけにもいかず、お言葉に甘えることになった。



控え室からロビーに移り、少し待っただろうか。



エントランスに、黒い車が横付けされた。



それが人目を惹くスポーツカーだったから、ほんの少しザワついた。



「迎えが、来ましたな。」



それを見たお爺さんが、言った。



ええっ!?この車に乗るの?



だけど、驚くのはそれだけじゃなかった。



その車から降りたのは…。






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