だから何ですか?


そんな過程あってのこのエレベーターの時間。


だから、彼女の他の女子への言葉ももしかしたら嫉妬絡みの非難なのかと思って、それを確かめる様に口にすれば。


振り返って見上げてきた彼女は無表情に怪訝を乗せるという器用な真似をしてみせる。


本気で『何を言っているんだ?』と言いたげな眼差しにはなんだか段々自信もなくなってくるけれど。


あれ?



「俺を好きだって言った・・・よな?」



最終的に居た堪れなくなってそんな不安交じりの疑問を口にして、薄化粧であるのに美人だと感じる彼女を見下ろし反応を待つ。


ああ、でも・・・改めて見ると美人だな。


元々美人であるというなんとなくな感覚はあった。


でも、意識してしかもこんな真正面から彼女を見つめるような機会はもなくて、部署も違うのだから顔を合わせる事自体が稀。


それに、美人であるけれど特別目立った印象ではないのだ。


美人である事を鼻にかけるでもない、浮ついた噂話もない、たまに美人だよな。という言葉を他人の会話から拾う程度だった存在。


だからこうして改めて向き合って、ちゃんと意識してみれば・・・物凄く美人じゃないか。と記憶し直してしまう程。



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