だから何ですか?
そんな姿を捉えた瞬間に無意識に亜豆を遮り隠す様に身を動かしてしまっていた。
まぁ、無意味と言えば無意味の行動だったのだけども。
こんな威嚇や警戒に素直に応じて身を引いてくれる男じゃない。
むしろ、・・・絡みにくる。
「あからさまに威嚇してくれちゃって」
「煩い。一服なら他にも喫煙場所あるだろ」
「いいじゃない。たまには煙たい喫煙ブースより開けた爽やか~な場所で吸いたい気分だったんだから。それとも・・・俺が来たら何か都合悪い事でも?」
「悪い。俺と亜豆の貴重な逢瀬を邪魔すんな」
「貴重な逢瀬ねぇ。・・・まぁ、愉快で興味深いやり取りはさっきから耳にしてたけどさ・・・何?2人は付き合ってるの?」
「そうだよ」
「いえ、そういうわけでは、」
「・・・・・えっ?」
弄りたくて仕方ない。
俺の亜豆への執着はこの前の電話でよく知っているくせに敢えて突っ込みを入れてくる性質の悪さ。
それに不機嫌だけども冷静に切り返していたというのに、俺を見事動揺に突き落としたのはまさかの亜豆の一言だ。
付き合いをはっきりと『そうだ』と肯定した俺の背後で、ほぼ同時に否定的な言葉を響かせた彼女には衝撃すぎて思考すら停止する。