だから何ですか?
明確に音として聞き入れて理解はしているのに確かめる様に振り返え捉えた亜豆は当然のことながらさらりと紫煙を漂わせる。
そんな彼女に再度、
「えっ?」
「『好き』だとは言いましたし、ありがたいことに『好き』だとも言われましたが『付き合おう』なんて会話は一切成されていないこの場合は付き合っているわけでないと答えるべきかと」
「出た・・・亜豆理論」
「私理論?私は至ってもっともな過程を口にしているだけだと思うんですが」
いや、そうですよ。
どっちが正論かって言ったら亜豆の方なんだろうけどさ。
アレだけ好き好き言ってキスして抱きしめてって・・・そこまでしたら言わずもがなというのも一般的には多くて。
ここでもまた肩透かし。
と、いうか付き合ってるって自信もって海音に対峙した俺がひたすらに痛い男じゃないか?
最悪だ。とまさに片手で頭を抱えたタイミングに堪え切れなかったらしい海音の笑い声が亜豆とは真逆の方から響いてきて舌打ち。
「あはははは、本当に面白いねぇ。経験から行けばこういった事は和の方が場数も踏んでるだろうに」
「煩い」
「あれだな。お前の上級者クラスの応用は亜豆のマニュアルキッチリな初級者クラスに適応できないってやつだ」
「・・・・・・何だろう。ムカつくのに変にしっくりきたし分かりやすい」
「さすが社長だろ」
ああ、本当相変わらず上から目線な物言いと笑顔は腹立つけれど、言っている事は的確で分かりやすい。