だから何ですか?
あっ、コレだとまたモヤッとする感覚に一人悩むことになる。と焦燥感のままに、扉が開くより早く彼女の手首を掴んで意識の引導。
それに従ってその視線を素直にこちらに向けて、『何?』とばかりの冷静な双眸を捉えた瞬間、
「気になって、」
その一言を口から弾いた直後に空気を読まず、静かに開く分厚い扉。
それに2人して一瞬チラリと視線を動かし、彼女は『あっ』と小さく声を漏らして捕まっていない方の手で開を押し。
「ありがとうございます」
「・・・えっ?」
「気にしてくれて」
「あ、・・・はい、」
「降りないんですか?それとも、上に何か用が?」
「いや・・・降りる・・けど」
じゃあ、どうぞ。
そんな風に感じる彼女の目だけのジェスチャーにそれ以上引き延ばせる雰囲気でもなくて、腑に落ちないまま渋々と歩み出してエレベーターの外へと身を出していく。
それでもなんだか納得いかないと振り返ったのにすでに扉は閉る瞬間で、俺の中途半端な感情なんて総無視に扉の閉ったエレベーターは静かに上昇を続けたらしい。
彼女の部署である24階へ。
それを示す様に見つめていた表示が24でしばらく止まる。
「『だから何ですか?』って・・・そっちが何なんだよ」
意味が分からねぇ。
もうあの女の事で悩むのは無駄かもしれない。と軽く苛立つ感覚で髪を搔きむしると自分のデスクのあるブースに向かって歩き出した。