だから何ですか?
「あ、そうだ、そうそう、『りお』じゃなかったかな。【アズキ リオ】」
「リオ?」
「確か・・・うろ覚えですがそんな呼び方だったと」
「そっか、サンキュ」
「亜豆さんがどうかしたんですか?」
「いや、ちょっと・・・変な女って思っただけ」
どうかしたのか。
そんな問いかけに浮上するのは人をさらりと振り回した姿ばかりで、もう考えるのをやめようと思っていても結局こうして未だ意識が縛られている事にも小さく苛立つ。
何で俺がこんな風にモヤっとしないといけないのか。
そんな不満で眉根を寄せ、『変な女』だと彼女を称すれば。
「珍しい。伊万里さんが女の人にそんな悪態つくなんて」
「別に悪態ついたわけじゃ、」
「そうですか?『変』なんて響きはどう捻じ曲げても褒め言葉には聞こえませんよ?」
「・・・すみません」
聞き捨てならないと言いたげに、すかさず俺の言葉に突っ込みを入れてくる姿には敵わない。
素直に非を認め「すみません」と苦笑いで切り返せば、『よろしい』なんて持っていた本でポンと頭を叩いてくる。
そんなおふざけを交わすほどには俺と彼女は親しくて。
多分・・・お互いに薄々な距離間。
あれだ、ちょっと意識しちゃってて、友達以上の感覚でまだ恋人までには踏み込んでない。