だから何ですか?
でも、そろそろお互いに出方を見計らっている。
一歩突き進んで絶妙な距離を埋めるタイミングを。
正直、俺には女運というものがついているらしく、ありがたいことに容姿も整い仕事も程々。
エースと言われるほどには出来る男だと自他共に認めている人間なのだ。
でも、仕事でも女性関係でもそれに驕ったような感覚を持ち合わせた事はない。
『好きだ』と言い寄ってくる女をとっかえひっかえなんて節操無しな事はしていないし、仕事だって一つ一つに前向きに全力で取り組んでいる。
そんな中で同じ事を目的とし、同調し、気が合う仲間である彼女。
おふざけも交わして時には一緒に事を成していれば特別な感情が芽生えるのも当然なことだろう。
それがたまたまお互いにお互いを意識したと言うところ。
運と縁。
あとは・・・行動するタイミングなんだろうか?
「そう言えば、部長が今日は祝杯だぁ!って飲み会収集してましたよ」
「はっ?祝杯?」
「ほら、伊万里さんの、」
「ああ、コンペ勝ち抜いたから。とか言って、何かと理由つけて飲んで騒ぎたいだけだしねウチの部署」
「フフッ、まぁ、最終的には主役なんてあってないものだから」
「しょうがないから名目貸しておきますとも」
「さすが伊万里さま」
ククッと冗談っぽく笑ってそんな会話をして、さすがに勤務中であるから雑談は程々に。
軽く手をかざし短距離間の別れを示すとパソコン画面に意識を戻して『ああ』と反応してしまった。