だから何ですか?
判子片手、『ご苦労様』と言いながら姿を見せたのは予想もしていなかった友人の姿で社長の姿で。
だけどもいつも見るような出来る男風なスーツ姿ではない。
髪には整髪料もなくさらりと下りていて、服装なんかはかなりくつろぎモードのスウェット姿だ。
あまりに違いすぎる姿に一瞬人違いか?なんて思いもよぎったけれど、相手も『驚いた』と反応を示した事で本人だと判断が下る。
そんな現状に先に状況を飲み込んだのは海音の方らしく、
「はっ・・・ははっ、あ~・・・」
「・・・・・・・」
「あーあ、・・・凛生っ、」
「【りお】!?呼び捨て?」
驚愕に固まって言葉も出なかった俺に苦笑いでポリポリと頭を掻いた海音が、室内を振り返り響かせたのは亜豆の下の名前だ。
親し気に、慣れた感じに。
それには衝撃飛び越え思わず突っ込みを入れてしまって、どう言う事なんだと海音を指さしたタイミング。
「なーに、海音くん?」
「っ・・・・・」
あどけない疑問の響き。
そんな声を響かせながら玄関続きの廊下脇の部屋からヒョイと姿を見せてきた亜豆に一瞬現状の戸惑いが吹っ飛んだ。