だから何ですか?
「どうぞ」
そんな言葉で目の前に置かれた紅茶を心穏やかに飲むなんてことは出来る筈もない。
『ありがとう』とも返せず、今程俺の前にお茶を置いた亜豆を向かい側の席に身を置くまで目で追いきったタイミング。
「さぁて、どんな関係語ったら楽しく修羅場る?」
「お前・・・本気で殺すぞ」
どんなも何も充分に修羅場ってる場面じゃないのかよ!?
と、空気読まずな発言を嫌味で悪びれない笑みで発してきた海音に睨みを返す。
勿論そんな睨みなどに臆する男でもなし、自分もこの複雑な状況の元凶だという事をわかっていないわけでもないだろうに。
それすらも楽しい催しだと言わんばかりにお茶を啜る姿には本気で一発かましてやろうかと思うほどだ。
でも、それをしないのは一応仮にも自分の勤める会社の社長である事が一つ。
そして、殴ったところでこの男は逆にそれをネタに今後も弄り倒しにくる。
あとは・・・・なんか俺の足元に居るガタイのいい犬が恐い。
何だこいつ、なんだっけ?シベリアンハスキーだっけ!?
番犬ってこいつか!!と、思いながらチラリと確認すれば綺麗なブルーアイでジッと俺を見つめて様子伺い。
威嚇されないだけマシなのかもしれないと犬の事への集中はそこまでにして、とにかく本題だと意識も視線も2人に戻した。