だから何ですか?
答えを求める様に無言で見つめれば、お茶に落とされていた視線がようやく浮上し俺の双眸と絡んでくる。
変わらない、まっすぐな視線。
偽ろうなんて意思はいつだって不在の眼差しは好きな要素であって、それでもこういう場面では少し怖くも感じる。
偽りのない目で何をまっすぐに答えるのか。
音を立てずに息を飲み唾を飲み、そうして待っている間はものの数秒であっただろうに酷く長く感じた程。
口紅を取ったらしいナチュラルな唇は形がいいなと、こんな時なのに一瞬見惚れ、その唇がゆっくり動きを見せた直後。
「好きです」
「・・・・・・・はっ?」
「伊万里さんが、伊万里さんだけが・・・好きです」
「・・・・」
「言いたいのはそれくらいでしょうか」
「・・・・・」
えっ?
・・・・本当にそれしか言わないの?
本当に予想もしない切り返しと言うのか。
思ってもみなかった響きに唖然として、それに念を押す様に言葉を綴れられて終わった。
言い終わるとさも満足だと言いたげに静かにお茶を口に運び始めた姿に何を言い返していいのか。
狐につままれたような感覚。
キョトンとしていると堪え切れないとばかりに噴き出した海音の笑い声が横から聴覚を刺激して。
それに、煩わしいと思う感覚の意識が働くでもなく、ひたすらに頭に残るのは亜豆一色。