だから何ですか?




曇りもなく、焦りもなく、むしろ戸惑い焦る理由などまるで分からないとさえ言いだしそうな程冷静な姿に一瞬で混沌としていた感情が鎮静され、強制終了された頭が再起動された様に働きだす。


再起動した頭に真っ先に復帰した感情は・・・、



「チッ・・・」



乾き、どこかピリッとした空気に響かせたのは苛立ち示す舌打ちの響きだ。


そうして腹立たしさと落胆を交えて体を折り曲げると『クソッ』と小さく吐き落とし、不満を眉間に寄せて顔を上げると、



「ふざけるな」



苛立ち一色の低い声音でその言葉を弾いて真っ先に視線が絡んだのは目の前に座っている亜豆だ。


カップを唇に寄せたまま、中身を飲んでいるのかいないのか。


だけども俺の声音には反応しその双眸だけはまっすぐに続きを待つように俺を射抜いてきている。


本当・・・翻弄するのも大概にしろよ。



「お前・・・本当にふざけんなよ・・」


「・・・・」


「とにかく・・・一発殴らせろ、海音」



クシャリと顔を覆う様にした手で髪を乱しながら苛立ちを表して、再度ふざけるなと不満の感情を吐きだしながら視線を向けた先は亜豆ではない。


捉えたのは煙を遊ぶように噴き出して、楽し気に目を細めこの展開を傍観していた男の方。


< 170 / 421 >

この作品をシェア

pagetop