だから何ですか?
色々とまだ未解決であるのにそんな記憶の反芻に笑いが零れたのは、自分の中で渦巻いていた疑心暗鬼がかなり小さくなったからだろう。
「も・・・亜豆が格好良すぎて・・・惚れ直したわ」
自分に対して情けないとは思う。
でもそれ以上に亜豆が素直に格好よくて、惚れ直して・・・惚れられていることに変に自信がついて。
中途半端だった腕をしっかり捲きつけ抱き寄せて、存在を確かめる様に肩にトンと頭を預ける。
シトラスの匂いに安堵する。
そんな事を思いながらゆっくり息を吸って吐いてした自分の耳に。
「伊万里さんじゃ出来なかったでしょ?」
「えっ?」
不意に小さく笑いながら弾かれた言葉に反応し、確かめる様に頭を預けて視線を絡める。
捉えるのは軽く口に端を上げてふふんとしてやった感じに笑う亜豆の表情。
でも俺に向けてではないのだろう。
その視線は扉の向こうに向いていて、多分海音に向かっ手の表情なんだろう。
「一応仮にも社長ですから。一般的モラルが阻んで感情任せに出来なかったでしょ?」
「亜豆?」
「だから、それが可能な私が命一杯してやりましたから。伊万里さんが行動できない場面ではまったく問題ない私が仕返してやりますから。・・・フフッ、私が守ってあげますよ」
ああ、新発見。
そんな風に・・・無敵に、不敵に笑ったりもするんだな。
ひたすらに・・・カッコイイヒロインにどこまでも惚れ直す。