だから何ですか?








こういう時ばかりは時間の経過というのは早いものだ。


早いと感じると言う事は気が重いと思っているという証明で。


そんな感情とは反してあれよあれよと問題の直前まで足を進められる。



「はぁっ・・・」


「28回」


「あっ?」


「伊万里さんの溜め息です。社を出てから密かに数えてたんです」


「じゃあ28個の幸せ逃がしてたか」


「大丈夫です。逃げた傍から私が捕まえておいたのでタイミング見て小出しに返していきます」


「っ・・・・・」



だから・・・なんか期待するような可愛い事言うなよ。


あっという間に終業時間になった一日。


残業のあった亜豆を待って一緒に社を出て、気が重い感情を抱きつつも歩みを進めればすでに亜豆の家の近辺に身を置いている。


そうして、どうやら気の重さを溜め息として零していたらしく、今まで特別突っ込みを入れなかった亜豆がここにきて溜め息の回数を告げてくるから苦笑い。


しかもなんか可愛い言い回しで期待を煽ってのそれ。


言った本人はさらりとしたいつもの無表情で、でも最近はそのギャップが妙に癖になりつつあるから困ったものだ。



< 272 / 421 >

この作品をシェア

pagetop