だから何ですか?




そもそも、呼ばれた目的がまだ明確でない。


いや、勿論今回の複雑なすれ違い関連の理由だとは分かる。


でなければ海音もいるであろう時間帯や場所に改めてお誘いをかけてこないだろう。


道すがら理由を聞くタイミングはいくらでもあったのにそれを追及しなかったのはやはり逃げなのか。


他愛のない会話ばかりを繰り返して、本題からは逃げていつも通りに甘んじて。


このままでもいいんじゃないかと更に逃げそうな思考もチラリチラリと顔を出していたのも分かる。


でも、きっと、きちんと解決しなければまた同じような事があるんだろう。


今回は踏みとどまった、過ちにも亜豆を失わずに済んだ。


でも、次は?


手放したくないと思うのであれば踏み込むのが唯一の道。



「はぁ、」


「29回」


「フハッ・・・亜豆から返してもらうの楽しみだ」



思わずついてしまった溜め息に即座の突っ込み。


今度は意味が分かるから噴き出して笑い、そうこうしている間に歩み進めていた足はゴールへ。


亜豆のマンション。


明かりは・・・当然の様についている。


立ち止まって見上げて、あきらかに理解する人の気配に再び複雑な息を吐きそうになるも口を閉ざして飲み込んだ。



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