だから何ですか?
そんな俺の背中をトンと軽く叩くと、にっこりと微笑んだ亜豆がスッと先に身を出し階段を上り始める。
『大丈夫ですから』
そんな風に感じた笑みに促され、溜め息とは違う息をフゥッと噴き出すと、なるようにしかならないだろうと意を決して階段を上り始めた。
「・・・ここ、良い部屋だよな。デザイン性っていうのか」
「でしょう。でも、もう少ししたら引っ越そうかと思ってるんです」
「・・・・引っ越す?」
「いえ、まだ未定なんですが」
階段を上りながらこの前も感じた好感を先に登っている亜豆に語りかければ予想外の言葉が返され小首を傾げる。
引っ越す気があると言う理由は何だろう?と純粋に疑問に思っている間に部屋の前にまで登り上げて亜豆と並んだ。
「会社にもっと近いところに移りたいとか?」
「それもまぁ条件としてありますけどね」
「・・・・」
「まぁ、その理由も後でゆっくり。・・・・と、言うよりすぐに分かりますから」
フフッと笑った顔は少し意地悪っぽい?
亜豆にしてはどこか含みのあるような笑い方だと感じながらもその答えは見えず小首を傾げ、横で鍵を開ける姿が『ただいま』と扉を開いたのに着いて中を覗けば。