だから何ですか?
完全に男子同士の語りあいになっていたそれに呆れたような突っ込みを入れた亜豆が、『着替えてくる』と自室に向かう後ろ姿を見送っていた最中。
「啼かせると超可愛い」
「っ・・・」
耳にコソッと吹き込まれた言葉に過敏に反応して海音を振り返れば、ククッと笑う楽しげな笑みに今ばかりは悪い気がしない。
むしろ、『へぇ』と楽し気に口の端を上げれば海音がトントンと肩を叩いてからリビングへと向きを変えて。
「せっかくだから今日は飲んでけば?」
そんな誘いに促され、断る筈もなくクスリと笑って自分もそちらへ。
それにしても・・・、
「良かった。お前と【きょうだい】なんて事じゃなくて」
「フハッ、あははは、いや・・・ここまで来たら是非なってほしいね、【兄弟】に」
「さぁ、そればっかしは何とも。まだお前の立つ地点なんて遠く見えもしないスタート地点だからさ」
「ま、そう簡単にここまで来られても困るし・・・何とビックリ障害物競走だってことを予言しとく」
それも薄々分かってるよ。
ああ、そういえばこんな風だったな。
亜豆が関わる前の海音との関係は。
気兼ねなく嫌味も含めて他愛なく話して、性質が悪いと思いつつも意外と癖になって面白い。
「ほら、」
促されリビングに入り、着ていたコートを脱いでいれば冷蔵庫からビールを持ってきた海音が手渡してくる。
素直に受け取ると自分の分の缶を軽くぶつけ一方的に『乾杯』と言って飲み始める姿にもう抱く憤りはなくなった。
『必要ありますか?』
無垢でつれない問いかけに振り回されて、
可愛いと思うほど憎らしくなって。
憎らしいと思うほど愛おしいに戻ってしまう。
そんな感覚の同志を得て、
前途多難は少しは緩和する?