だから何ですか?


「お気になさらず、」


「・・・・・はっ?」


「クリスマスの事です。どうしてもカップルが寄り添って気分を上げなきゃいけない日でもないでしょう」


「いや、まぁ、そうなんだが」


「伊万里さんがいきなりそんな事言いだすなんて・・・。やっぱり金曜の夜に海音君が言った事引っかかってたってとこですかね」



ああ、もうどこまでも亜豆さま。


終始淡々と興味なさげに弾かれる言葉には色気も愛想もないけど俺としてはなんか救われるような気もする。


そこに特別亜豆も『我慢して』という感覚もなく、重要な問題ではないと言う感じに煙草を吹かして遠くを見つめて。


しかも、何でそんな事を言いだしたかという様な突っ込みと、思い当る節である名前を上げられれば確かに正解なのだ。



『お前ら、クリスマスはどうするの?』



他愛のない会話の中のさらりと弾かれた問いかけだった筈。


それでも問われた瞬間に『へっ?』と素っ頓狂な声を響かせ、『何が?』とばかりに海音を見つめ返せば、すべてを悟ったように『マジか』痛そうな顔をされたという金曜の夜。


そんな流れをあの時も亜豆はビール片手に冷静に傍観していたっけな。

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