だから何ですか?
その姿が装いを変えて場所を変えて今こうして隣にあるような感じだ。
「それに、伊万里さんが集中すべきなのは世の中のムードに無理矢理乗る事じゃないでしょう?」
「えっ?」
「それこそ・・・クリスマスが本番だって言ってたじゃないですか。例のデパートのリニューアルキャンペーン。クリスマスイブの土曜が本番で、今週はその準備に追われるって金曜も言ってたくせに」
「いや、まぁ、そうなんだけど」
「今だってこんなにのんびり煙草吸ってる時間も惜しいんじゃ?」
確かめる様にチラリと走ってきた視線にはドキリと心臓が跳ね、すぐに降参だと苦笑いを浮かべて煙草を口から離した。
確かにおっしゃる通り。
前々からありがたくもご指名受けていたデパートの大口仕事の大詰め。
リニューアルオープンとそのキャンペーンがクリスマスイブの今春末に迫っていて、正直この一週間は現場に行ったり最終確認やリハーサルとバタバタなのだ。
クリスマスだなんだと浮れてる心の余裕はないと言えばない。
それでもやはり指摘されてしまえば気になるというものだろう。
考えてみたらつきあってからまともに恋人らしい時間を過ごしていないのだ。
記憶にあるのはあの観覧車に乗った時間くらいだろうか。