だから何ですか?
それこそ肩透かしであったような。
思っていた様な、勝手にどこか意識過剰に構えていた様な声かけではなく、視線すらこちらに向かずの問いかけは当たり前のような確認で。
ああなんか・・・1人気まずい。
気まずさからようやく彼女から視線を逃し、背後の壁にトンと身体をもたれさせる。
そんな中でも静かに上昇するエレベーターの浮遊感と彼女の気配と。
逃した癖に気がつけば無意識に走らせていた視線。
自分の目に映り込むのは先程となんら変わらないしゃんとした彼女の後ろ姿。
長い髪を後ろで一つに纒め、纏められた髪の毛先の方は癖なのかパーマなのか軽くうねりを見せている。
服の上からでも分かる体のラインの細さ。
ああ、よく見たらピアスもしていたんだ。
目立たない程小さくシンプルな物。
新発見だと思って観察していれば、
「そういえば、」
「っ・・はい、」
「おめでとうございます」
「えっと、・・・何が?」
「デザイン。製菓会社の新商品パッケージに採用決まったさうじゃないですか」
「あ・・・ああ、そうなんだ。俺も出社してさっき聞いたところで。・・・情報、早いね」
「秘書ですから。社内の事くらいは大まか把握してますし、・・・伊万里(いまり)さんの事だし」
「えっ・・・、」
「・・・有名でしょう。新進気鋭でクリエイティブのエース」
「あっ・・・、」
そっち・・・。
そういう意味ね。