だから何ですか?



寒いな。


そんな事を改めて思って見上げる空は完全なる濃紺の夜の帳。


時刻を確認すれば深夜間近だというのに、チラリと走らせた周囲には人がごった返して賑やかで明るい。


それもそのはずだ。


今日は大晦日で、ここが神社というイベント会場化している日なんだから。


今もすでに何回かの除夜の鐘が鳴り響いている。


大晦日に鐘つきにくるとかいつぶりだよ?と記憶を遡ってもガキの時しか浮かばない。


それにしても最悪的に冷え込む夜だと、立ち上る白い息を捉え視線で追っていれば。



「えっ・・やだちょっと和じゃないの?」



そんな、特徴的な自分の名前を組み込まれた声に反応しない筈がなく、振り替えて捉えた姿にはこっちの方が『嫌だ』と言いたくなる。


そんな感情をうっかり表情に出してしまっていたんだろうか?



「相変わらずいいのは顔だけね。露骨に嫌な顔して感じ悪~い」


「菜緒・・・」



先に感じ悪い口調で呼びかけたお前に言われたくないぞ。


ああ、でもこいつはこういう奴だったか。と思いだしたくもない記憶を回想し、浮上した記憶にやはりうんざりと息を吐く。


良い思い出が浮かばねぇ。


そもそも、何で俺こいつと付き合ってたんだっけ?



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