だから何ですか?
嫌な男だろうか?
一瞬その響きに聞きなれた響きだと感じた自分は。
それでも、聞き慣れてはいたけれどその時ばかりは一瞬呆けて驚愕したと言える。
ゆらりゆらり風に揺れる自分の黒髪を見つめ、他人から見たら切れ長の双眸を瞬かせる。
聞き間違いかとも思って、自分の噴かした目の前の紫煙からすぐさま視線を隣に移行させる。
そうして捉えるのもまた紫煙。
その紫煙越しに何食わぬ感じのさらりとした無表情の彼女が遠くの景色を双眸に映し込んでいて。
そんな姿は客観的に絵になる図だと思い、一瞬振り返った目的を忘れた程。
それでもそう簡単に忘れられるような衝撃ではなかったのだ。
すぐに我に返って目的の疑問のままに響かせた声は
「えっ?」
と、スッとボケたような、さも聞こえていなかったような響き。
かといって意地悪でそんな聞き返しをしたわけでなくて、自分のきき入れた響きにどうも信用がなかったからだ。
そんな感覚で振り返った彼女は更に自分の記憶を危うくするような姿で、下手したら俺に興味がないくらいの感覚で咥えていた煙草を口から離して設置されている灰皿にトントンと灰を落とす。
やっぱり・・・聞き間違いか?
『えっ?』と言った疑問の響きにも反応を返さないくらいだし。