だから何ですか?


きっと、都合のよすぎる聞き間違いだったんだろう。と自分に答えを出して静かにその視線を彼女から離し、口に煙草を戻したタイミングだったか。



「『好きです』・・・そう言いました」


「っ・・・ゴホッ」



再び響かされた言葉に、見事予定していたより深く煙を吸ってしまって、当然消化しきれないそれに小さくむせ込み原因となった彼女に視線を戻す。


そうして捉えたのは、紫煙漂う煙草を手に今度はしっかりとこちらを見上げている彼女の姿だ。



「えっと・・・」


「好きです。伊万里さんの事」


「・・・あ、ありがとう?」


「はい、」


「・・・・」



えっと・・・えっとぉ?


物凄く処理に困ってしまうのだけど?


普通であるなら男として程々に優越を感じてもいい場面なのだろう。


こうして面と向かって女子から告白を受けた場面であるのだ。


しかも相手は秘書課の女子で容姿だって見目麗しい。


そこそこ男性社員の噂話にも名前が上がる彼女の存在や名前くらいは知識的にあった。


それにこうして時々喫煙所の一つである屋上で時間同じに煙草を噴かす事もあったのだ。


でも、ただそれだけで、まともに会話らしい会話をした記憶はない。


今日だって、『あ、いるな』くらいの感覚で程よい距離の隣で煙草を噴かしながら今取り掛かっている企画のプレゼンなんかに思考を巡らせていたのだ。



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