だから何ですか?
『で?何?結局は好きになっちゃったから、一番ライバルそうな俺に牽制したくて電話してきたとか言う?』
「いや、あんまりにも亜豆が可愛すぎて、それを分かってくれそうな奴に共感同調してほしかったような」
『ぶっは、あはははははは。本当亜豆も面白いけど和も充分に面白いよ』
「馬鹿にするな」
『いや、馬鹿にはしてない。楽しんでるだけ』
「そういうのを馬鹿に___」
してるって言うんだよ。
そう続くはずだった言葉は途切れて無音になった通話に摘み取られ、確認する様に目の前に動かした携帯はいつも通りの待ち受け画面。
あいつ、切りやがった。
チッと舌打ちを響かせると上着を羽織り、そのポケットに携帯を放り込む。
パソコンのデザインをもう一度焼き付ける様に見つめると気が済んだタイミングで作業を閉じて本体の電源も落とした。
そうして立ち上がり自分も帰路につこうと支度を始めればふわりと香る馴染みのないシトラスの匂い。
どうも自分から香るそれは、
「亜豆か、」
彼女の残り香。
「・・・・抱きてぇ」
どこまで阿呆みたいに欲情していたのか。
そんな欲情を内に収められない程興奮している自分に小さく笑い、ブースの明かりを落とすと職場を後にした。