だから何ですか?





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恙ない。


むしろ朝から絶好調と言えるスタートを切ったといえる勤務中の一服の時間。


冬と言える季節でも日によっては風もなく日差しで温かいといえる当たり日はある。


今日がまさにそんな日だと、吸っている煙草の煙を雲一つない晴天に噴き上げ目を細めて見つめた。


まるで自分が空に雲を作り出しているような感覚だな。


そんなジャケットも絵になるな。なんて不意に浮かんだ発想を無意味に頭で広げてしまうのはクリエイターならではの創作欲か。


当然実際は雲になどなり得ず静かに緩やかに空気に混じって消えて行く紫煙。


それを見上げて煙草を咥え直したタイミング。



「雲を作ってるみたいですね」



タイミングが良すぎる。


あまり風が吹かない日であるのに、たまたま吹いたそれに乗って凛と俺の耳に届いた声には思わず口の端が上がる。


手を添えたまま咥えていた煙草をおろし、フーッと唇をすぼめ煙を噴きながら声の主へと視線の移行。


定まった視界に今日もコツコツとヒールを響かせ、早くもポーチから煙草を抜きだし口に咥えながら近づいてくる姿はクールビューティー。



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