だから何ですか?




ちょっとやそっとじゃ突き崩されないような凛とした姿はいつもの通りであるのに、思わず『フッ』と笑いが零れたのは昨夜の姿が鮮明だからか。


そんな俺の笑いを気にしているのかいないのか、微塵も動揺も焦りも見せない彼女は静かに俺の隣に並んで咥えていた煙草に火を着ける。


絵になるけれど決してスマートに出来上がった絵ではない。


その裏を知ってしまえば余計に愛おしくなる彼女の喫煙の姿。


そんな姿を横目に煙草を咥え、静かに自分の出来たペースで吸って吐いて。



「大好評でしたよ」


「・・・・何がでしょう?」


「昨夜の俺達の合作デザイン」


「ああ、」


「そのおかげで朝から褒めちぎられて気分がいいやら悪いやら」


「・・・悪い?」


「だって、俺だけの才能で、俺だけの出来じゃないから」


「・・・・悔しいんですか?」


「少しね。でも、それを上回るいい闘争心で刺激」



自分の創作欲をいい意味で煽られ刺激された。


だから悔しいけれど心地よくもあって、なんだか気分がいいと身を軽く感じながら煙草を噴かせていた今の時間。


そこに・・・亜豆も来た。


何故だろう?


来ると思っていた。


来ないはずはないと。


昨日の今日だ、普通であるなら気まずくて来ないだろうと予測してもいい筈なのに来るとしか頭になくて。


実際・・・今隣にいる。



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