だから何ですか?
では、今一見クールに煙草を噴かす彼女の頭は何を思い描いているのか。
どんな予想もつかない純な思考で俺を驚かしてくれるのか。
そんな事を思って煙草を吸って、程々に灰になったそれを灰皿にトントンと落とした。・・・そんな直後、
「伊万里さん、」
「あっ?」
呼ばれた声に素直に亜豆の方へ首を捻れば、ほぼ同時にジャケットの胸座を掴みに来た華奢な指先。
それでも引く力強く、こちらも思いがけない事態であったからそのまま強引に引かれてよろめいた足が半歩程前に出た。
衝撃も衝撃。
あ、・・・予習?
そんな思考が追い付いたのは亜豆の柔らかい唇が自分の唇に押し重ねられた数秒後。
日差しがあるとはいえ冬の空気にさらされた唇は冷たい。
なのに絡む息ばかりは異常に熱い。
そんな事を感じるキスの味はどこまでもお互いに煙草の苦みに満ちている。
片手で胸座掴んで引き寄せて押し付ける様にキスするって・・・、どこの男前だよ。
そんな事を亜豆の片手にある煙草から揺れる紫煙を見ながら思い、口の端上げ、カッコイイばかりのそれに予習の結果としては不満足だと意地悪を返そうと思った矢先。
「好きです」
凛と耳に響いて焼き付く亜豆の声。