だから何ですか?
驚く程告白の実感がない。
対処の困る時間に煙草の匂いも味も染み込んではこず、隣の彼女も特別次の対応をしてこない。
動きがあるのはお互いの風に揺られる紫煙くらいで、何とも言えない時の流れに自分から何かモーションをかけるべきかと煙草を口から離したタイミング。
「あの、」
「っ・・はい、」
「お先です」
「・・・えっ、」
ようやく彼女からの反応に安堵したと同時、すぐに紡がれた言葉とそれを示すような動きに唖然と固まってしまった。
『お先に』と言った彼女が煙草が入っているらしいポーチを手に、こちらに愛想もなく一言残すとカツリカツリとコンクリートにヒールを響かせる。
高めのピンヒールで疲れないのだろうか?
一瞬ヒールの音から意識がそこに行きかけて、次に目がいったのは背中で揺れる一纏めにされている長い髪。
風に遊ばれ光を通して、一本一本が細い髪だと見た感じ思ってしまう。
そんな後ろ姿を引き止めるでもなく只々見つめ、振り返りもしなかった姿はあっさりと入り口から社内へとその身を隠した。
そうやって一人残されてしまえばますます白昼夢でも見たような感覚に陥って、我に返ったのは手に持っていた煙草の灰が今にも堕ちそうだと気がついたから。
そんな・・・数日前の告白の時間。