だから何ですか?




そんな俺に特別怯むでもなく、歩みを緩めるでもなく普通に隣に並んだ姿が、煙草を咥えながら俺の苛立ちに小首を傾げて火を着ける。


静かに吸って、ゆっくり吐いて。


そうしてようやく再び俺に視線を戻すと。



「それで・・・不機嫌な態度の原因はなんでしょうか?」


「それ本気で聞いてるのか?」


「・・・はい。考えても、ひっくり返されても多分原因となる答えは降ってこないかと」



亜豆なりに俺の不機嫌の要因を探し思考してはくれたらしい。


それでも『分からない』と結論が出るとそのように俺に切り返してきて、それが意地悪の類でないと分かっているから余計に性質が悪いと溜め息が漏れる。


とりあえず感情的すぎた心情は程々に落ち着いた。


煙草を一度咥え吸って吐いて、それからようやく口から響かせた言葉は、



「3日、」


「はっ?」


「3日ぶりなんですけど?」


「・・・はぁ、まぁそうですね」


「そう、あの日から3日。顔も見なければ音沙汰もなく3日。3日の放置プレイだったんだかどう説明する?」



あの日とは、亜豆が恐ろしいくらい可愛い行動で俺を翻弄し、あまつ『大好き』と言い放って去っていた【あの日】なわけで。


『もっと気軽に話しかけてもいいですか?』なんてしおらしい宣言をしたものだから、次の日も当たり前の様にここでその姿が来るのを待っていた自分がいたのに。


< 92 / 421 >

この作品をシェア

pagetop