だから何ですか?
いや、さすがに日中の屋上。
この前の残業中の2人きりの状況とは異なるわけだし、欲情したところで不毛な展開だろう。
そう思考が及べば、一度クールダウンだと唇を離してようやくまともな酸素を吸った。
目の前ではさっきまでひたすらに冷静を維持していた顔が見事崩れて、酸欠か逆上せたせいか涙で微睡む目をまっすぐにこちらに向けて見つめてくる。
「・・・・煽るな、」
「見つめてただけです」
「それが煽りだろ」
「じゃあ、それで」
「あっ?」
「【煽り】でも何とでも。・・・言ったでしょう?充電不足で死活問題なんです」
「・・・」
「大人しく・・・見つめられてください」
何だよ・・・その、いい聞かすような不満顔は。
てっきり『煽ってません』なんて言う切り返しが来るのかと思い込んでいた。
でも実際は『じゃあ、それで』なんて言うまったくに想像も予測もしていなかった言葉の響きで。
その時点ですでにしてやられていたというのに、追い打ちをかける様に真正面から俺のジャケットを掴んで引き寄せて、至近距離から喧嘩を売るように睨み覗き込んできた姿の愛らしい発言。
顔真っ赤にして、おっきな両目に涙溜めておいてよくこういう事を・・・。