だから何ですか?
冷静だったり戸惑ってみたり、相変わらずサラッとしてると思った直後にはいきなりこんな風に照れてみたり。
掴めなさすぎる存在にこちらの心はがっちり掴まれているから堪らない。
「いや、それはちょっと」
「大丈夫だって、誰も来ねぇって」
「いや、普通に風邪引きそうなくらい寒いでしょう?ここ」
「いや、むしろ寒い寒くないの問題なの?だったら今すぐ鍵のかかる資料室とか行く?」
「どうしたんですか?何かヤバい薬でもやったんですか?」
「あのさ、亜豆が煽ってるんだって。ヤバい薬とかしてないから痛い引き目で見てくるな」
俺をこんな風にしてるのはお前だと、どこか引いた感じに見つめてくる亜豆に目を細めながら煙を噴きかけた。
それをパタパタと手で払う彼女は意味が分からないと言いたげに小首を傾げて俺を見つめている。
本当・・・なんか一筋縄でいかない。
そんな感覚を彼女に覚えやれやれと頭を掻いた瞬間。
「ハハッ、黙って傍観してたけど面白いね。亜豆と和」
そんな声の介入に、更に眉根を寄せて重苦しい息が自然と零れた。
何でわざわざここに?と思わざるを得なくて、あからさまに嫌悪を示した表情で振り返り捉えるのは、
「この寒い中わざわざ屋上に何の御用でしょうね、社長様」
「ん?目的は一緒で一服だよ。君たちと一緒、何か問題が?」
クスクスと響くのは相変わらず意地悪いからかうようなもの。
いつだって質のいいスーツを身に纏って他者を誘惑するように微笑み近づくのは海音の姿。