どうしたって期待したい!!



そんなボヤキをいくら内々で呟こうが彼を引き止める効果はまるでなく。

「じゃ、夜分にお邪魔しました」

「っ………」

「…………」

「っ~~~」

「鈴原、」

「っ……いいっ。分かってる。ごめんなさい。…突っ込まないで」

分かってるの。

自分がうっかりした行動に充分に自分で打ちのめされて悶絶してる最中なの。

そう、うっかりなの。

うっかり……玄関扉に手を伸ばした彼の背後から、引き止める様にコートの裾を掴んでしまった。

本当に手が勝手に……。

あざとさ狙いの行動じゃないの。

本当にただ……

「っ………来て……くれて…ありが…とう」

「………」

嬉しかったの。

嬉しくて…楽しくて……だから寂しくなっただけなの。

だって、こんな風に会えるとは思ってなくて。

話せるとは思っていなくて。

楽しい時間が濃すぎたが故にそれに比例して……いや倍増して寂しい。

でも、子供みたいだ。

帰り際にこんな風に引き止めて、きっと水城くんも困って……

「……狡いんだから」

「………えっ?」

「ってか………本当、危なっかしい事極まりない」

「へっ?!……な、」

何がですか?



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