湖にうつる月~初めての恋はあなたと
弁当に残っていた最後のだし巻き卵を口に頬ばった時、相原さんは急に話始めた。
「これ、トップシークレットなんだけど」
「ん?」
だし巻き玉子をもぐもぐしながら、相原さんに顔を近づける。
「私、来年結婚するの」
「えー!」
あまりに驚いて玉子の固まりを飲み込んでしまい咳き込む。
「そんなに驚かせちゃった?」
相原さんは咳き込む私に慌てて水を持ってきてくれた。
「そりゃ驚きますよ~、だって」
だって、海外赴任になった彼と別れてそれ以来ずっとひとりだって聞いてたから。
「少し前に広まってた私の噂話、谷浦さんの耳にも入ってた?海外赴任になった彼と別れたっていう」
ここまできたら嘘は言えなくて、水を飲んだ後、小さく頷いた。
「ふふ。噂ってほんと話の欠片を話す人が勝手に想像を膨らませながら独り歩きしていくものなのよね。聞いてて、伝言ゲームみたいでおもしろいわ」
「そうなんですか?」
思いがけず自分の噂を軽く笑い飛ばす相原さんに安心しながら答える。
「で、どなたと?」
「その海外赴任になった彼とよ」
相原さんはそう言うと楽しげに笑った。
「え?でも?」
「そう、噂では別れたことになってたかしら?彼が海外赴任が決まった時、一緒に来て欲しいと言われたんだけど、丁度その時うちの秘書のトップが退職することになってね、私が急遽トップにならなくちゃいけなくて。さすがにそんな大事な時に私まで退職しますなんてできるはずもなくて、彼には事情を話して断ったわ」
「それで、別れてはいなかったんですか?」
「そうね、私もいつまで秘書として働き続ければいいのか先が見えない状況だったから、別れ話はしたわよ。だけど、彼はいつまででも待つって言ってくれたの。だから、ようやく秘書の仕事も落ち着いてきたから迎えに来てってお願いしたら来年結婚することが決まったってわけ」
「それはおめでとうございます!」
相原さんは少し恥ずかしそうに笑いながら、後ろに束ねていた髪を解く。
ふわっと肩に落ちた黒髪はつやつやと輝いていて、普段男っぽい相原さんがとても美しく見えた。
噂の一人歩きってこういうことなんだ。
でも、噂を裏切った相原さんは本当にかっこいい。そんな噂をもろともしない強さがある。その強さが彼女の美しさを作っているような気がした。
私だったら、きっと噂に負けてしまうだろう。今でさえ、すぐに疑心暗鬼になってしまうんだもの。
「これ、トップシークレットなんだけど」
「ん?」
だし巻き玉子をもぐもぐしながら、相原さんに顔を近づける。
「私、来年結婚するの」
「えー!」
あまりに驚いて玉子の固まりを飲み込んでしまい咳き込む。
「そんなに驚かせちゃった?」
相原さんは咳き込む私に慌てて水を持ってきてくれた。
「そりゃ驚きますよ~、だって」
だって、海外赴任になった彼と別れてそれ以来ずっとひとりだって聞いてたから。
「少し前に広まってた私の噂話、谷浦さんの耳にも入ってた?海外赴任になった彼と別れたっていう」
ここまできたら嘘は言えなくて、水を飲んだ後、小さく頷いた。
「ふふ。噂ってほんと話の欠片を話す人が勝手に想像を膨らませながら独り歩きしていくものなのよね。聞いてて、伝言ゲームみたいでおもしろいわ」
「そうなんですか?」
思いがけず自分の噂を軽く笑い飛ばす相原さんに安心しながら答える。
「で、どなたと?」
「その海外赴任になった彼とよ」
相原さんはそう言うと楽しげに笑った。
「え?でも?」
「そう、噂では別れたことになってたかしら?彼が海外赴任が決まった時、一緒に来て欲しいと言われたんだけど、丁度その時うちの秘書のトップが退職することになってね、私が急遽トップにならなくちゃいけなくて。さすがにそんな大事な時に私まで退職しますなんてできるはずもなくて、彼には事情を話して断ったわ」
「それで、別れてはいなかったんですか?」
「そうね、私もいつまで秘書として働き続ければいいのか先が見えない状況だったから、別れ話はしたわよ。だけど、彼はいつまででも待つって言ってくれたの。だから、ようやく秘書の仕事も落ち着いてきたから迎えに来てってお願いしたら来年結婚することが決まったってわけ」
「それはおめでとうございます!」
相原さんは少し恥ずかしそうに笑いながら、後ろに束ねていた髪を解く。
ふわっと肩に落ちた黒髪はつやつやと輝いていて、普段男っぽい相原さんがとても美しく見えた。
噂の一人歩きってこういうことなんだ。
でも、噂を裏切った相原さんは本当にかっこいい。そんな噂をもろともしない強さがある。その強さが彼女の美しさを作っているような気がした。
私だったら、きっと噂に負けてしまうだろう。今でさえ、すぐに疑心暗鬼になってしまうんだもの。