湖にうつる月~初めての恋はあなたと
父はまだ集中治療室にいるようだった。
でも、身内なら病室に入って少しなら会話してもいいと看護師に言われたので、思い切って父のいる階に上がる。
まさかこんな場所でこんな形で父と久しぶりに会うことになるなんて思いもしなかった。
色んな緊張が胸を締め付ける。
父のいる10階に着き、看護師さんに付き添われて病室に入る。
父はたくさんの管に繋がれじっと横たわっていた。
あまりに痛々しい姿に思わず視線を落とす。
ゆっくりとベッドに近づき、目を閉じている父に小さな声で呼びかけた。
「お父さん」
父の眉間がぴくんと反応し、ゆっくりと目を開けた。
「ま、ことか」
父の声にはいつもの力強さはなかった。
「お父さん、気分はどう?」
「いいわけないだろ」
いつもの減らず口の父がそこにいることに嬉しくなる。
「無事でよかった」
「ああ、俺は大丈夫だ。山川さんには本当に感謝してる。真琴からも重々お礼しておいてくれ」
「うん、わかってる。山川さんはお父さんの命の恩人だね」
「ああ、ほんとにそうだ」
父は穏やかな目で頷いた。
「今までごめんね。私がこんなだからお父さんにいっぱい心配かけて」
父は私から目を背けると小さく舌打ちをする。
「ここでそんな湿っぽい話はしないでもらえるか。俺まで気分が滅入ってくる。俺はお前が心配してるほどお前のことは心配してないから安心しろ」
私はそっと父の手を握った。
「お店、私にできること手伝いたいの。お父さんがお店にちゃんと復帰できるまで」
「店?」
父が私の顔に再び視線を上げる。
でも、身内なら病室に入って少しなら会話してもいいと看護師に言われたので、思い切って父のいる階に上がる。
まさかこんな場所でこんな形で父と久しぶりに会うことになるなんて思いもしなかった。
色んな緊張が胸を締め付ける。
父のいる10階に着き、看護師さんに付き添われて病室に入る。
父はたくさんの管に繋がれじっと横たわっていた。
あまりに痛々しい姿に思わず視線を落とす。
ゆっくりとベッドに近づき、目を閉じている父に小さな声で呼びかけた。
「お父さん」
父の眉間がぴくんと反応し、ゆっくりと目を開けた。
「ま、ことか」
父の声にはいつもの力強さはなかった。
「お父さん、気分はどう?」
「いいわけないだろ」
いつもの減らず口の父がそこにいることに嬉しくなる。
「無事でよかった」
「ああ、俺は大丈夫だ。山川さんには本当に感謝してる。真琴からも重々お礼しておいてくれ」
「うん、わかってる。山川さんはお父さんの命の恩人だね」
「ああ、ほんとにそうだ」
父は穏やかな目で頷いた。
「今までごめんね。私がこんなだからお父さんにいっぱい心配かけて」
父は私から目を背けると小さく舌打ちをする。
「ここでそんな湿っぽい話はしないでもらえるか。俺まで気分が滅入ってくる。俺はお前が心配してるほどお前のことは心配してないから安心しろ」
私はそっと父の手を握った。
「お店、私にできること手伝いたいの。お父さんがお店にちゃんと復帰できるまで」
「店?」
父が私の顔に再び視線を上げる。