湖にうつる月~初めての恋はあなたと
喉がなぜかカラカラにに乾いている。

ベッドに座り直し、澤井さんのメッセージを開いてみた。

【真琴 先週はおいしい抹茶プリンとロールケーキをありがとう。同居の件はお父さんには話せたか?】

話せるわけないし。

もう話す必要もないよ。

【もし話せてないなら、俺が直接お父さんに話しにいくよ】

え?

どういうこと?!

何言ってるんだろう、澤井さんは。

直接澤井さんが父に話すなんて、しかも同居なんていう非常識な話を。

父は昔気質だから、そんなの絶対許すはずないんだから!

それに、もういいでしょう。

澤井さんには忘れられない人がずっと心に住んでる。

ニューヨークに戻るまでの暇つぶしに私と同居するなら、父の怒りをわざわざ買う必要もない。

私も、もうこれ以上彼と一緒にいたら・・・・・・

きっと彼のこと忘れられなくなる。

ますます次の恋が遠のいていくもの。

彼が彼女を忘れられないように、私も彼を忘れられなくなる。

澤井さんは男に慣れるための仮彼氏という存在だったはずなのに。

いつの間にかこんなにも彼のことで全てがいっぱいになってる私。

澤井さんが悪いわけじゃない。好きになってしまった私が全部悪い。

【澤井さん 同居はやはり無理です】

返信を打つ。

一つため息をついて立ち上がり、スマホをポケットに入れて部屋を出ようとした時、電話の着信音が鳴った。

まさか、ね。

見ると澤井さんからの電話だった。

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