山猫は歌姫をめざす

【5】徹夜と初顔合わせ


       5.

(ん……。腰、痛いかも……)

夢うつつのなか、未優は腰の痛みを自覚したまま、目覚まし時計に手を伸ばす。

今、何時だろうか。
……が、手は何もつかまなかった。固い毛足のカーペットの感触がする。

(……ん?)

パチッと目を開けると、長い足が見えた。

男物のコットンパンツに、自分の足ではないことを確認し、薄ら寒い右側に比べ、左側がやけに温かいことに気づく。思わず、勢いよく振り向いた。

留加だ。
小さく寝息を立て、眠っている。どうやら二人して、防音室の壁ぎわで寝てしまったらしい。

(隣に留加がいたら眠れないって言ったの、どこのどいつだ)

自ら突っこんで、未優は留加を起こしかけた。が、その寝顔をじっくり見るチャンスとばかり、とりやめる。

起きている時は、慧一と同い歳くらいだろうと思ったくらい大人びて見えるが、今は自分よりも幼く見えるほど、あどけない顔をしていた。

(起きている間は、気が張ってるから、歳より上に見えるのかな)

淡々と語られた、差別されてきたという事実に、胸が痛む。そういった経験が、留加の表情を厳しくさせているのかもしれない。

(でも、意外に子供だよね)
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