山猫は歌姫をめざす
すると、パチパチと誰かが手を叩く音が聞こえた。

目をやれば、整った目鼻立ちの褐色の肌をした白金髪の女性が、未優を見て微笑んでいた。
つられたような拍手が、それぞれのテーブルに広がっていく。

拍手がやむと、その女性が立ち上がった。
上半身を傾けた際に、白金の髪の間から『犬』の耳がのぞき見えた。“異種族間子”という単語が、未優の頭をよぎる。

「元気があっていいわね、未優。
私は『王女』のシェリー。25歳よ。こちらこそ、よろしくね」

やわらかくあたたかい微笑みに、未優はうっとりとして彼女を見返した。

(うわ~……キレイなお姉さん、ってカンジ。それに、あの耳が超かわいー)

感動して見とれている未優の耳に、ガタンと乱暴に席を立つ音が届いた。

「───同じく、『王女』の(あや)。21歳。……よろしく」

銀髪に深紅の瞳は『狐族』によく見られる特徴だ。気のせいか敵意を感じる眼差しに、未優は軽く頭を下げて答える。

(なんだろう、このカンジ……やだな)

その後、『声優・偶像・踊り子』と、それぞれが簡単な自己紹介をしてくれ、そうして初顔合わせは終わった。



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