山猫は歌姫をめざす
溜息をつく。薫の言っていた「稼ぐ手段」なのかもしれない。

(あ……)

トレーニングルームの透かし扉の前に立つと、先客がいるのが目に入った。

シェリーだ。腰下まである白金髪をひとつにまとめ、踊っていた。
指の先まで神経がいき届いていて力強くしなやかな動き。が、それ以上に、長い手足と豊かな胸、くびれた腰のラインが、未優の目を奪った。抜群のプロポーション。

(いいなぁ……あの胸の半分が、あたしにあったらなぁ……)

「───未優? どうしたの? 入ってらっしゃいよ」

視線に気づいたらしいシェリーが踊るのをやめ、立ち止まったままの未優に声をかけてきた。

どぎまぎしながら未優は扉を開ける。

「あのぉ……一緒に練習しても、いいですか?」

シェリーはくすっと笑った。

「構わないわ。一緒にやりましょう」
「はい! ありがとうございます!」

朝の食堂でのあいさつと同じく快活で明るい声。シェリーは笑みを深めた。

(素直な子ね……)

シェリーは踊りが苦手だという未優の練習を見てやることにした。
腰の入れ方と手指の使い方を教えてやると、驚くほど見違えた。どうやら筋は良いようだ。

二時間ほど通して踊ったあと、二人して休憩をとった。
< 111 / 252 >

この作品をシェア

pagetop