山猫は歌姫をめざす
清史朗が着ているものと同じ、従業員用の制服だった。

「まさか、あんたまでここの従業員になったとか言うんじゃないでしょうねぇ?」
「あったり! 今日から僕が、未優専属の世話係だよ」

いたずらっぽく笑って片目をつむる薫に、未優はげっ……とつぶやいたが、響子が咳払いすると、薫は肩をすくめてみせた。

「……なんていうのは半分冗談で半分ホント。
世話係になったのは本当だよ。ただ担当は、未優を含めて“地位”の低い『偶像』と『踊り子』なんだけどね。
でも、気持ちは未優専属ってコトで、頼りにして欲しいな」

語尾にハートマークでもつけてそうな薫の口調に、未優はげんなりとした。

「どうか、お願いだから平等に……できればあたしだけ放っておく方向でいてくれる?」
「えーっ! そんなの、僕が世話係になった意味ないじゃん! ひょっとして未優ってば、照れ屋さんだったりする?」

(……薫って、やっぱりちょっと感覚がズレてる気がする……)

いちいち反応するのも面倒になった未優が黙っていると、響子がパンッ、と大きな音で手を叩いた。

「坊っちゃんは、ちっと黙っててくれるかい。
未優、アタシに話があるんだろ」
「あ、はい! あの……あたし、いつになったら“舞台”に立てますか?」
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