山猫は歌姫をめざす
第4章 連鎖舞台

【1】忌むべき時間


       1.

『狐族』の“支配領域”が集中しているヤマト国西側の“第四中央領域”に、シルバータウンはあった。
“連鎖舞台”の発祥の地とされている。

もともと“歌姫”の“舞台”は、神に捧げる奉納舞いが変化したものだと伝えられてはいるが、真偽は定かではない。

ただ、神楽(かぐら)の舞手に『狐族』の者が多く、その“純血種”が『禁忌』の座に就いたことによって、“歌姫”の芸術面が評価されるようになったのは、歴史的事実だ。

通常、“歌姫”の“舞台”は、神話や童話の一場面だけを演じているが、“連鎖舞台”とは、四名の“歌姫”により、同じ演目の第一幕から終幕を、一人一幕ずつ順に演じることをいう。

“第三劇場”では『王女』二人を中心に据え、週末の三日間、それぞれのグループに“舞台”を行わせている。
そして、客の投票数が多かった方の演目を、最終日にもう一度、行うこととなっていた。

グループ分けは『王女』以外、各“地位”の中から選ばれる。
『王女』は二人しかいないため必然的に固定となるが、他のメンバーは総入れ替えとなることが多い。

「“演譜”は手元に渡ったね。見ての通り、演目は『灰かぶり』と『ラプンツェル』だ。
来月のあたまにメンバー決めの試験をやるから、覚悟しておいで。……あんたらの面白い“解釈”、期待してるよ。
以上、解散!」

週に一度の全体練習の場で、次の“連鎖舞台”の演目が発表となった。

(これが、あたしが“舞台”に上がるための、チャンス……)

配られた二つの“演譜”を握りしめ、未優(みゆう)は正面を見据え、決意を新たにする。



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