山猫は歌姫をめざす
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通常、同族同士であれば、獣になっても話は通じるが、異なる“種族”間では意思の疎通ができない。
よって“変身”中は、基本的に外出ははばかられる。
学校や仕事なども、「変身日」である旨を伝えれば欠席や欠勤扱いされずに済む。
だから未優は、初め、その《声》は気のせいだろうと思った。
だが《声》から受ける《感覚》は、慧一や父親のそれと一緒で……留加のものだと信じざるを得ない。
『……変な感じだ』
「うん。あたしも。……あ、えぇと、やっぱり気分悪い? その……思ったこと筒抜けで」
今は犬の姿をした留加は、身体を伏せて前足を交差し、そこに頭をのせている。ふさふさの尾が、パタパタと動いた。
『別に、伝わって困ることはないから構わない』
伝わった言葉に、未優はうらやましい……と思う。
自分なら、絶対に聞かれたくないあれこれを考えてしまうだろう───特に、留加の前では。
『それにおれは、言葉で伝えるのは苦手だ。
……思ったことが、そのまま伝わるなら、その方がいい』
穏やかで優しい思念。明確な「心の声」とは違うそれが未優の内側に届く。
ふと、未優は思いついて、口を開いた。