山猫は歌姫をめざす

【4】成長の軌跡


       4.

“連鎖舞台”のメンバーを決める試験日。
すべての“歌姫”がトレーニングルームにそろっていた。

「では、事前に申告してもらった希望の演目ごとに、各“地位”、演じてもらいます。
今回『王女』のお二方には、シェリーさんが『灰かぶり』の第三幕を。綾さんが『ラプンツェル』の終幕を演じられることになってます。
皆さんには、それ以外の各幕を演じていただくことになりますが、よろしいですね?」

清史朗が集った“歌姫”を見渡す。異を唱える者はなかった。

(綾さんが『ラプンツェル』側の『王女』かぁ。ちょっと緊張するな……)


未優はちらりと綾の方を見た。
面と向かって「嫌い」と言われたのは初めての経験で、未優はあれ以来、綾と顔を合わせても、あいさつしかしなかった。
そして、綾の方は、そんな未優を完全に無視していた。

───試験は、まず『灰かぶり』の第一幕から行われた。

通常、どんな演目でも第一幕は『踊り子』が選ばれることが多い。
今回も例にもれず、『踊り子』二人と『偶像』一人の希望者となっていた。

続いて、第二幕と終幕も行われ試験は『ラプンツェル』へと移った。

未優の希望した第二幕は、ラプンツェルの歌声に誘われた王子──というくだりが見せ場のためか、『声優』三人が三人共、希望をだしていた。
< 146 / 252 >

この作品をシェア

pagetop