山猫は歌姫をめざす
「お前が止めて聞くような女だったら、俺はこんなに苦労してない。
だったら、お前の行動を予測して先手を打つ方が、楽だと思っただけだ」

地下モノレール乗り場に着く。ここは、猫山家の専用レーンだ。

ほどなく滑りこんで来た一両のモノレールに乗りこむと、慧一は未優を座席へと下ろした。自らも隣へ腰かける。

「……要するに、あんたはあたしが“歌姫”になることを、応援してくれるってこと?」

「とりあえず、そうとってくれて構わない。
俺は、お前という『イリオモテの女』を護る立場にある。
だから、一族の為にも動くが、ひいてはそれがお前の為になることも……ならないことも、あるだけだ」

未優は溜息をついた。
(父さまといい、慧一といい……)

自分の周りの男供は、どうしてこう、もってまわった言い方ばかりするのだろう。
始終、謎かけされているようで、物事を解りやすく単純にとらえたい彼女にとっては、イライラさせられっ放しだ。

(あー、メンドくさっ……)

地下を行くモノレールの車窓に、未優のふてくされた顔と慧一の冷徹な表情が、並んで映しだされていた……。






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