山猫は歌姫をめざす
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インターネットで検索をかけるとこの近郊の“劇場”では、『虎族』の“支配領域”でしか、新人の“歌姫”を募集してなかった。

未優の住む“区域”からモノレールを乗り継いで、二時間弱の場所だ。二本目の乗り換えで『山猫族』の支配地から離れる。

(ちょっと不安……)

未優は、違う“種族”の“支配領域”にあまり入ったことがない。
しかも、その数えるほどの経験も常に誰かと一緒で、単独で入ったことは一度もなかった。

もちろん、表立っての差別はないだろうが、それでも『山猫族』は、六つの“種族”のうち、力関係でいえば下から数えた方が早い。

(もう! ここで弱気になって、どーすんのっ)

自分で自分をしかりつけ、電子履歴書に必要事項を打ちこんでいく。ふと、保護者の同意欄で指が止まる。

(父さま……は、ダメだし)

来年になれば、未優も十八だ。成人として扱われ、同意なども必要とされなくなるのだが。

(あいつに……頼むしかないか……)

†††††

ノート型の端末に慧一はあっさりと自らの署名をし、そのまま虹彩認証を行う様を、未優は呆然として見ていた。

「面接は──一週間後だな。スケジュールを調整すれば、なんとかなるだろう。他に何かあるか?」
「特に……ないけど……」
「なら、出て行ってくれ。お前のお陰で、やらなければならないことが増えた」
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