山猫は歌姫をめざす
【7】共存関係
7.
ホワイトボードの公演スケジュール表に、未優の名前が記入された。
基本スケジュールでは『声優』の“地位”の者が入っている日程だ。
未優は、“連鎖舞台”においての客の要望により、平日に再演することが決まったのである。
(ひとつの“舞台”に立って、それが評価されれば、また次の“舞台”につながるんだ……)
そうして“舞台”を積み重ね、未優が『禁忌』の“地位”にふさわしいということを、周囲に認めてもらうのだ。
うん、と、自らに言い聞かせるようにうなずき
未優が踊りの練習を再開しようとした時、トレーニングルームの扉が開いた。
「あ、未優。良かったら、一緒してもいい?」
オレンジ色の巻髪を肩下まで伸ばした少女が、未優を見て人懐っこく微笑む。『偶像』の愛美だった。
「日程、見てたの? お互い、たくさんリクエストもらえたみたいで、良かったねぇ。
未優、この間が初“舞台”だったんだよね? なのに、あれだけ堂々と演れるなんて、スゴいじゃん」
ポンッと勢いよく肩を叩かれ、未優は「ありがとうゴザイマス」と、とまどって答える。
実は、愛美とまともに話したのは、これが初めてである。
未優はそんな愛美の態度に面食らってしまったのだ。