山猫は歌姫をめざす
愛美は未優の反応に目をぱちくりさせた。
それから失笑をもらすと、もう一度肩を叩いてきた。

「ちょっとぉ~同い年(タメ)なんだから、もっとくだけて話そうよぉ。未優って意外と、マジメな子?
最初の挨拶はあんなにトバしてたんだからさ~遠慮することないじゃん? それとも何、誰かになんか言われたりしたの?」

図星をさされ、未優は驚いて愛美を見返した。
そんな未優に愛美は、ふうっ……と大げさに溜息をついてみせた。

「やっぱりねぇー。でも、そんなのいちいち気にしてたら、ここではやってけないよ?
いろんな“種族”が集まってるんだしさぁ、女ばっかりじゃん? 気が合わない人だっているのは当たり前。そーゆー人は、無視ムシ!」
「そ、そういうもの?」
「そーゆーもん。それよりさぁ、未優、それ地毛だよね? カラコンもナシでしょ? ってコトはぁ、『山猫』だよね?」
「うん、そうだよ。……愛美は『虎』、だよね?」

ベンガルトラの血をひく者によく見られるオレンジ色の毛髪に、未優はそう指摘した。

たいていの者は、地毛を染めることはない。
だが、ひとめ見て“種族”が知れることを嫌う者や、他“種族”への憧れをもつ変わった趣味の者が、染髪をしたりカラーコンタクトを入れたりすることもあるのだ。
< 165 / 252 >

この作品をシェア

pagetop