山猫は歌姫をめざす
「だって、あの“希少種”のアムールトラの“純血種”なんだよ? これが王子でなくてなんなのよー。
でも気取ってないし優しいしぃ……いいよね~薫サマ。一度、夜のお相手、してくれないかな~? なにげにエッチうまそうだしぃ」
(ぎゃーっ)

未優は思わず耳をふさいだ。
やはり『虎族』は《そういう“種族”》なのだと再確認する。

「やっぱさぁ、たまには若い人とシたいじゃん? オヤジばっか相手にしていると。
そりゃ紳士なオジサマ~もいるし、それはそれでテクとかすごかったりするけど───」

未優は目もつぶった。
駄目だ、話題についていけない。どうしよう?

「もうそのくらいにしてやったら? その子、『禁忌』なんだし」

抑揚のない暗く低い声。
未優は驚いて目を開け、その声の持ち主を見上げた。
短い黒髪に、青みががった灰色の瞳をもつ長身の少女───『踊り子』のさゆりだった。

「わっ。そうだった! ゴメン! 未優、大丈夫? この手の話って、やっぱ気分悪くなるもん?」
「あ、その……苦手ってだけで……話題についていけなくて、こっちこそ、ごめんね」
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